「老後不安」を減らす生き方……「医師とじょうずに付き合う」秘策

アメリカ屈指のがんセンターで働く元がん患者の医師・上野直人さんに学ぶ①

病気にかかったとき、より良い医療を受けるため何ができるのか。アメリカ屈指のがんセンターで働く上野直人さんに、「最善の医療を受けるための医師との賢い付き合い方」についてお伺いしました。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍内科部門教授 上野直人さん

[プロフィール]
米国内科専門医と腫瘍内科専門医の資格をもつ。専門は乳がん。日本ではチーム医療推進者として知られる。
【チーム医療紹介サイト】http://www.teamoncology.com/
【上野先生フェイスブック】http://www.facebook.com/ntueno
【上野先生ツイッター】http://twitter.com/teamoncology


〝医師の質〟は
同じではない。
治療法は自分で選択

日本の大きな病院は「3時間待ちの3分診療」とよくいわれます。そんな短い時間で、患者さんが主治医と信頼関係を築いて、納得のいく治療を受けるのは、なかなか難しいことだと思います。なかなか緊張で言いたいことが言えなかったり、重要なことを聞き逃してしまったりというのは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。

そして医師も人間ですから、いろんなタイプの人がいる。患者さんとのコミュニケーション能力が高い人も低い人もいますし、最新治療について勉強を続ける人も不勉強な人もいます。医師免許を持っているからといって、患者さんをひとめ見ただけで、その人がどんな医療を求めているのかがわかる医師はいません。


がんになったからこそ
患者の立場を理解できた

右大腿部に肉腫が見つかったのは、9年前。今でも覚えています。シャワーを浴びているときに、あれ、しこりがあるなと。病理検査でがんだという結果が出たときは、やっぱり自分の感覚が合っていたのだと思いました。さすがにその日は眠れませんでしたね。

手術後、再発率30%と言われて、再発の心配が頭から離れませんでした。いろいろな情報を持っている医師の自分でさえそうなんだから、一般の患者さんならなおさらでしょう。

がんになってわかったのは、患者が医師、看護師を信頼することの大切さです。私も医師に対し「本当の病状を隠しているのではないか」と疑心暗鬼になったことがあります。そういうときに孤立を加速させないためにも、医療スタッフとの“受け身”ではないコミュニケーションは必要なのです。

軽い病気であれば、医師に対する不満や不信感は大きな問題にならないかもしれません。ただ、命にかかわる病気では、医師と患者が正しいコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことが不可欠になります。


診察時には
メモと質問を用意

病気を抱えているのは患者さん自身です。自身の病気について何を知りたいのか、どんな治療を望み、仕事や家事をどうしたいのか。もし余命を告げられたら、どう過ごしていきたいのか。それを決めるのは、厳しい言い方になりますが、やはり患者さん自身です。

アメリカでは、国民皆保険制度のある日本と違い、医療サービスは高額になりがちです。また、患者さんも真剣に自分の病気や治療法を調べているように感じます。

じつは、患者さんの理解度によって医師の対応が変わることはありえます。医療の質を下げることは絶対にしませんが、病気への理解度が低い患者さんには、治療法の選択肢を狭め、説明を簡素化する可能性はあるでしょう。

診察を受けるときは、事前に医師に伝えることを書き出しておき、診察中はメモをとれるようにしましょう(下記を参照)。説明の少ない医師には「ほかに考えられる病気は?」など、診断の根拠を質問してみてください。

話が難しかったら、最後に「私はこう理解しましたが、合っていますか?」と確認するのもおすすめです。


「自分カルテ」を作り
説明上手になろう

 診察は患者さんの状態を知ることがスタートです。初めてかかる医師の診察では、上のような病歴を記した「自分カルテ」があると便利です。いつ・どこで・どんな治療を行ったか、大体の流れがわかるといいですね。

もし、命にかかわる病気と診断されても、焦ってはいけません。進行が特別に早い疾患でなければ、冷静になる時間をもらい、自分の状態を理解してから治療を始めましょう。治療法は必ずオプションがありますので、それを理解してから納得した治療を進めることが一番大切です。


*雑誌「NHKガッテン!」臨時増刊号(2017年11月発行)より


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