「老後不安」を減らす生き方……「食をいつまでも楽しむ」秘策

テレビの料理番組でも人気!料理研究家・鈴木登紀子さんに学ぶ①

テレビの料理番組での楽しいおしゃべりが印象的な“ばぁば〟こと鈴木登紀子さん。「上手に食べて老後を楽しく生きる食事術」について、持病と向き合いつつ、今も日本料理研究家として元気に活躍する鈴木さんにお伺いしました。

日本料理研究家 鈴木登紀子さん(93歳)

[プロフィール]
1924年、青森県八戸市生まれ。自宅で始めた料理教室をきっかけに、46歳で料理研究家に。40年以上にわたってNHK「今日の料理」に出演し、“ばぁば”の愛称で親しまれている。『のんきに生きる』(幻冬舎)など、著書多数。


おいしい朝食で
元気な一日をスタート。
感謝の心で味わいます

今年で93歳になりましたけど、食欲がないというときがないのですよ。朝、昼、晩の食事に加え、おやつも食べていますしね。もし、私に食欲がなくなったら、そのときは「お通夜の用意よ」と周囲には言っているのです(笑)。

食事の内容は年齢とともに自然に変わりましたね。今は、おいしいもの、質のいいものを少しずつ食べるようにしています。体の声に正直になると、旬の食材を自然と選ぶようになるの。

お肉も好きで食べますよ。高齢者の健康を維持するには、良質なたんぱく質は欠かせないそうです。とはいえ、量は1食で100gほどですけどね。

夫が亡くなってからしばらく一人暮らしをしていましたが、90歳を機に次女夫婦と同居を始めました。普段の食事は、次女が作ってくれるのですが、どれもおいしいのですよ。とくに楽しみなのが朝食です。サラダや卵料理、チーズ、フルーツ、パンなどが少量ずつワンプレートに盛られているスタイル。具材やドレッシングを工夫したサラダは本当にうれしい、ありがたい一品ですね。おいしいサラダを作るって、忙しい朝にけっこう大変なことですもの。材料を切って洗ってパリッと冷やして。そんな朝食を1時間ほどかけて、ゆっくりいただいています。

ただ、塩分は控えめにしているの。だって、とりすぎると〝象さんの足〟になるのよ。素材が新鮮だと風味が豊かですから、薄味でも十分おいしくいただけます。


よい「おだし」を使って
味付けは最小限に

私にとって「料理」は何よりの健康法です。その時間、夢中になって手や頭をフル回転させますから。和食の素晴らしさを伝えたいと思って40年以上続けている料理教室は、今も月に10日ほどあります。日本全国から生徒さんが来てくれて、私の生きがいです。旬の野菜や魚を使った和食は身体にやさしく、日本人の身体を整えてくれます。

和食の基本である「おだし」は、インスタントではなく、かつお節や煮干し、昆布などでとってほしいですね。おすすめは私の故郷、青森の「焼干しいわし」。毎年、取り寄せています。子どものころからの懐かしいお味なの。

いい素材でとったおだしがあれば、味つけは控えめでも十分おいしい。日常的に使うものは何でもいいから、量をケチらず使うのがポイントですよ。


ばぁばのこだわり食材

"だしの王様"といわれる
むつ湾の「焼干しいわし」

「むつ湾でとれたイワシの頭とはらわたを取り、乾燥させてから炭火で焼いたものです。水に浸すだけで琥珀色のだしがとれ、日本そばのつゆには欠かせません。野菜の煮物なども、やさしい良い味になりますよ」


病気のときも
「食べる」ことで
生きる力をわき立たす

年相応に大きな病気もしてきました。子宮筋腫、肝臓がん、大腸がん、糖尿病、心筋梗塞……。良いお医者さんに出会えたこともありますが、病気になっても私はくよくよ落ち込みません。余計にストレスがたまるから。なりゆきにまかせ、おとなしく寝て〝病気が過ぎ去る〟のを待つの。くよくよしていると、周りの人も気が滅入るでしょ。

入院中は元気になるために、「食べる」ことを意識していました。病院食がおいしくなくても、文句を言わずに食べる。食欲が落ちていても箸をつける。食べることは生きる原点ですから。

糖尿病についてはこれまで薬をのんだり、インシュリン注射もしてきましたが、おいしいものをあきらめられなくて、この年までなかなかよくならずに来てしまいました。だから病院に行くと、いつも自分から「言いつけを守らない悪い患者が参りました」と先生にごあいさつするのよ(笑)。

体調が悪いときは
好きなものを食べて

体調が悪いときは無理せず、好きなものを少し食べるようにしています。

どなたにでもおすすめなのがおかゆね。米1カップと水6カップを鍋に入れて、弱火で40分煮るだけ。最後は少し蒸らしてお米を落ちつかせると、ふんわりトロトロになるの。そして、梅干しをほんの少し合わせるの。のどごしがよく、ひと口食べるだけで体の奥からじんわり温まります。日本人には最高の滋養食ではないかしら。

料理を作るのがしんどいときは、缶詰を活用するのもいいですよ。私は缶詰が大好きなのよ。娘には「忙しいときは、缶詰でもいいの」と言っています。質の良いさけ缶などをストックして、お留守番のときに食べています。

人間ですから、疲れて何もしたくない日もあるんですよ。そんなときは白いごはんと、缶詰やたっぷりのおひたしがあれば十分。どんなときでも、食べたら必ず力が出ます。この年まで生きてますと、もう「こうしなくてはならない」というのはないの。無理はせず、「何事もほどほどに楽しむ」という気持ちで過ごしたいと思うのです。

*雑誌「NHKガッテン!」臨時増刊号(2017年11月発行)より


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