この人とこれからやっていける?……「家庭の不安」解決策

「夫源病」提唱者である医師の石蔵文信さんに学ぶ①

日本人の平均寿命は伸び続け、100歳以上の高齢者は、2050年に約70万人になるといわれています。そんな「人生100年時代」で、さまざまな「老後不安」を抱えている人も多いのではないでしょうか。夫の存在や何気ない行動が原因で、妻が体調を崩す「夫源病」の提唱者である石倉文信さんに、「家庭の不安」を解決する方法を取材しました。

大阪大学人間科学研究科附属未来共創センター招へい教授 石蔵文信さん

[プロフィール]
時代に先駆けて、男性更年期外来を開設し、中高年のメンタルケアに取り組む(診察は大阪の眼科いしくらクリニックhttp://gghouse.jp/)。『妻の病気の9割は夫がつくる』など著書多数。
また健康・エコ・災害対策として自転車発電の普及のために日本原始力発電所協会(http://eco-powerplant.com)を設立し活動中である。


シニア世代の妻を襲う
“夫源病”(ふげんびょう)の正体とは?

超高齢社会の夫婦は、昔よりも長ーい老後をともに過ごすことになります。仲むつまじい老夫婦の姿は世のあこがれですが、医師の立場から、シニア夫婦のメンタルケアに取り組んできた石蔵文信さんは、“おしどり夫婦など、めざさないほうがいい”と断言します。

「私は16年前に男性更年期外来を開設し、数多くの中高年男性の相談に応じてきました。そのなかで、治療に協力してもらおうと男性の妻に来院してもらうと、その妻も不調を抱えているケースが続出。診察すると、夫への不満がストレスになり、心身に不調をきたしている妻が多かったのです」

そこで石蔵さんは、妻の不満を明らかにし、夫婦双方のカウンセリングを実施。すると、多くの夫婦が症状を改善できたそうです。

「私は夫が原因で起こる、このような妻の心身の不調を“夫源病”と名づけ、著書で発表しました。すると予想を超えた大きな反響が!“私はまさに夫源病だ”と、多くの女性が声を上げたのです」


いったい妻は、夫の何にストレスを感じているのでしょうか。

「夫源病になりやすいのは、夫の“上から目線”で支配的な言動に不満を感じながらも、我慢してしまう妻。今の50~60代は、まだまだ“夫は外で稼ぎ、妻は家を守る”という意識が強い。経済的に優位な夫が支配的になりがちなのです。気になる人はぜひ、下記の『夫源病チェック』を、ためしてみてください」


有効なのは、ケンカと
“聞くふり”

とくに夫源病発症のきっかけになりやすいのが、夫の定年だとか。

「最近はよく言われることではありますが、妻にとっては、夫が家にいること自体がストレスです。代表的な例が“昼食うつ”。朝食と夕食の準備以外は、日中は自由に動けた妻も、定年して家にいる夫に昼食を作るとなると、その自由を失います。その環境の変化が、妻の大きなストレスになります」

では夫源病にならないためには、どうすればよいのでしょうか。

「無理に仲よくしようとせず、逆に距離をおくほうがいいですね。妻は仕事なり趣味なり、どんどん外に出ること。そして、不満があったら夫と上手にケンカして、ストレスをためないことです」


夫源病の原因にならないための
夫へのアドバイスは?

「第一に“上から目線”の態度をやめること。妻を『おい、おまえ』と呼びつけず、名前で呼ぶようにすると意識も変わってきます。また、妻の不満は『夫が私の話を聞いてくれない』ことだし、夫は妻の長話は、うっとうしい(笑)。男女では、求めるコミュニケーションが違うんです。最善策は夫が“聞くふり”をすること。『大変なのよ』には『大変だね』と、オウム返しでいいんです」

夫婦がストレスなく「人生100年時代」を楽しむために、何より大切なのは自立。夫も家事ができるようになることだと、石蔵さんは強調します。

「妻は夫に、自分のことは自分でやってほしいと切望しています。ここで意識を変えておきたいのは、夫の自立は夫自身のためでもあること。長い人生、妻が病に倒れるかもしれない。そのとき、食事も洗濯もできないようでは、困るのは夫です」

かくいう石蔵さんも、結婚当初は家事能力ゼロだったとか。でも、妻と共働きしながら、3人の娘を育てるなかで、家事をせざるをえない状況に。そこで料理を作るなら、簡単でおいしいものをと工夫するようになったといいます。今や、その経験をもとに、料理教室を開催するほどに。

「夫が自立をめざすには、料理から始めるのがおすすめです。妻の“昼食うつ”も防げるし、手先を使うから認知症予防にもいい」

そもそも、世の理想の夫婦像は幻想で、それをめざすのが間違いという石蔵さん。


「CMで見るような理想の夫婦像と比べて、イライラするのは損です。大事なのは夫婦がそれぞれ“おひとりさま”として自立すること。各自が趣味や居場所を持って、そこにはお互いに干渉しないことです」

ないものねだりでストレスをためるより、“つれあい”を見る角度をシフトしてみる。それが、長い老後を、夫婦で心おだやかに過ごすための心得であるようです。


*雑誌「NHKガッテン!」臨時増刊号(2017年11月発行)より


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